医療法人社団誠和会 白鬚橋病院 栄養科
各疾患の食事:肝炎


肝臓病を治す特効薬はない。
肝臓の働きをよく知って、肝臓を疲労させないで常に生き生きさせる為に、煮遅行のバランスの良い栄養摂取と三度の食事を規則的にとり、暴飲、暴食を避けた生活とアルコール量に注意すること。

  • 蛋白質は、良質のアミノ酸を意識し、過不足なく、とること。
  • エネルギーも、不足すると蛋白質から補おうとするので、過不足なく、とること。
  • 油脂は、必要以上にとらない。
  • 食物繊維を、たっぷりとる。
  • 便秘は大敵なので予防のため、野菜や海藻を沢山とる。

 
 1.病名
 肝炎
 2.原因
 肝臓病は、発生原因や臨床症状により分類される。
 肝臓病の種類    
   A型肝炎ウイルス(流行性肝炎)
 E型肝炎ウイルス
 1、急性肝炎  ウイルス性肝炎  *B型肝炎ウイルス(血清肝炎)慢性化傾向
 *C型肝炎ウイルス(非A型・非B型)
 *D型肝炎ウイルス
 その他(サイトメガロウイルス、EBウイルス)
 <上記*印は、血液関連型>
 薬剤性肝炎  中毒性肝炎
 アレルギー性肝炎
 2、 慢性肝炎  慢性非活動性肝炎(非代償期)
   慢性活動性肝炎(急性増悪期)
 3、劇症肝炎  (食事療法できない)
 4、 肝硬変  代償性肝硬変
   非代償性肝硬変
   肝性脳症(肝性昏睡)
 5、 脂肪肝  アルコール性脂肪肝
   低栄養性脂肪肝(飢餓、たんぱく質欠乏)・・・HDLができないから。
   過剰栄養性脂肪肝  (糖尿病性脂肪肝、肥満による脂肪肝)
     (インスリン非依存型)
    ★脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に異常に蓄積した状態をいう。
 6、肝癌    (食事療法できない)
  1. 急性肝炎
    • ウイルス感染や薬物中毒などにより、肝臓に急性の炎症を生じ、肝細胞の壊死や細胞機能の低下が起こるものを急性肝炎と称している。
    • A型肝炎は、A型肝炎ウイルスによって発病し、患者の排泄物で汚染された食べ物、飲料水の摂取により経口的に感染する。
    • 日本では急性肝炎の2〜3割を占めている。
    • 一度感染すると抗体ができ、再び感染はしない。従って肝硬変に移行することはない。
    • 衛生上と密接な関係があるため、抗体をもたない人が衛生状態の悪い東南アジア、アフリカに行き、この肝炎に罹患してしまうことが多い。(昭和41年以降の出生者は抗体を持っていない)
    • B型肝炎は、血液・精液・体液を介して感染する。
    • 日本では殆どみられないが欧米では、デルタ肝炎というB型肝炎の人のみが感染し、劇症肝炎、重症肝炎になる感染症もある。
    • B型肝炎には、持続性感染(出生時に母親から感染したり、幼児期に感染した時のウイルスを一生持ち続ける。
    • 症状としては軽い肝炎だが、肝細胞が破壊されたり治ったりの繰り返しをすると、次第に肝硬変へ進行)と、一過性感染(98%完全治癒型。2%は劇症肝炎に移行し、その70%は死亡してゆく)がある。
    • C型肝炎は非A・非B型肝炎ウイルスの中で、B型肝炎ウイルスと同じように血液感染。
    • しかし、C型肝炎ウイルスが発見されて間もなく、感染者の約80%が慢性肝炎に進展し、肝硬変、肝癌の原因の半分以上を占めているという現状も判明した。
    • C型肝炎が肝癌になる可能性は一般の50倍とも言われる。
    • E型肝炎はA型と同じく経口感染。大流行する特徴あり。妊婦がかかると劇症肝炎になる。
    • 日本ではあまり問題にならないが、大流行地域から帰国した人による輸入肝炎がある。
    • アルコール性肝炎は、肝臓の分解処理能力を超えたアルコール摂取が原因。

  2. 慢性肝炎
    • (肝臓の炎症や肝機能検査異常が6ヶ月以上持続している状態)
    • 急性肝炎が進展して慢性化することが多い。
    • ほか、薬物による中毒性肝炎、自己免疫性肝炎、遺伝的性疾患によって起こるものもある。
    • 活動性慢性肝炎の20%は、肝硬変に移行する。

  3. 脂肪肝
    • 中性脂肪が異常に蓄積した(肝細胞の30%以上に脂肪空砲)状態。

  4. 肝硬変
    • 肝炎や薬物中毒、アルコール障害などにより、肝細胞が障害され、肝細胞壊死が起こると、その回復・再生が起こり、繊維が増える。これがくり返され、正常な肝小葉構造が失われ、肝臓は硬く、萎縮し、表面も凸凹になる。
    • 血管系も圧迫され、肝血流減少や門脈圧亢進を生じてくる。その原因の約80%はウイルス。約20%がアルコールと言われる。
 3.診断
 【肝臓病の臨床検査値】
 1、胆汁色色素代謝  a血清総ビリルビン  正常値 0.2〜1.2mg/dl以下
 直接型ビリルビン  正常値 0.5mg/dl以下
 間接型ビリルビン  正常値 0.8mg/dl以下
 b尿ビリルビン  直接型ビリルビンのみ検出
 c尿ウロビリノーゲン正常値  疑陽性(±)〜弱陽性(+)
 2、たんぱく質代謝  血清たんぱくと分画
 a血清総たんぱく  正常値 6.5〜8.0g/dl(TP)
 アルブミン  正常値 4〜5g/dl(TPの60〜70%)
 α1グロブリン  正常値 0.15〜0.3g/dl(TPの2〜4%)
 α2グロブリン  正常値 0.4〜0.9g/dl(TPの6〜12%)
 βグロブリン  正常値 0.4〜0.7g/dl(TPの6〜10%)
 γグロブリン  正常値 0.8〜1.7g/dl(TPの11〜24%)
 A/G比(アルブミンとグロブリンの比)  正常値 1.5〜1.8
 bプロトロンビン時間  正常値 10〜15秒
 c血清リパーゼ  正常値 9〜43U/L
 TTT=チモール混濁反応  正常値 0〜5U(空腹時)
 ZTT=硫酸亜鉛混濁反応  正常値 4〜12クンケル単位
 3、脂質代謝  a血清コレステロール(総)  正常値120〜220mg/dl エステル型60〜80%
 b胆汁酸
 4、色素排泄試験  aICG=インドシアニングリーン試験  正常値10%以下(15分値)
 bBSP=ブロムサルファレイン試験  正常値5%以下(45分値)
 5、酵素診断方法  a血清トランスアミナーゼ  
 GOT(=AST)正常値 35lU/L未満
 GPT(=ALT)正常値 35lU/L未満
 b血清アルカリホスファターゼ  
 ALP      正常値 3〜12単位以下
 LAP      正常値 25〜40単位以下
 γ−GTP   正常値 50lU/L未満
 (未発病でも、高値で飲酒者には将来性を説明し飲酒を止めさせる)
   LDH      正常値 200〜400 lU/L
 LDHアイソザイム   疾患によりLDHアイソザイム上昇
 ACP      正常値 5.9〜14.0 U/L
 CHE(コリンエステラーゼ) 正常値 200〜400lU/L
 6、特殊な検査   aB型肝炎に関する検査  HBs抗原 HBs抗体 HBc抗体
 HBe抗原 HBe抗体
   bA型肝炎に関する検査
  1. AFE=αフェトプロテイン(癌の時に出る物質)
  2. 血中アンモニア
  3. 血清鉄
 7、肝機能検査の選択  
 8、肝シンチスキャニング  
 9、腹腔動脈造影法  
 10、腹腔鏡検査法  
 11、肝生検法  
 12、腹部CTと超音波診断法  
 4.症状
  • 急性肝炎の一般症状は、発熱、全身倦怠、嘔吐、吐き気、腹部膨満、胃もたれ、下痢、便秘、脱水、食欲不振、およびビリルビン代謝が障害されると黄疸を発現する。
  • 肝臓病の症状のほかにも、高血圧、低血圧、糖尿病、痩せなど、様々な個人症状の違いがあり、生活リズムや嗜好性にも独自性があるため食事は出来るだけ個人にあったものを心がける。
  • 症状の軽い場合は1〜3ヶ月位で患者の80%程度治癒する。残りは様々な経過をとって慢性肝炎や肝硬変へと移行する。
  • 慢性肝炎では、一般的に自覚症状は殆どみられない。
  • しかし急性増悪期では、全身倦怠感、心窩部あるいは腹部不快感、悪心、食欲不振がみられ、黄疸はこの時期以外、一般にみとめられないか不顕性黄疸で活動型でやや強い傾向にある。
  • また、殆どの人に肝の肥大が認められ、時に脾腫もみとめられる場合がある。
  • 肝硬変の場合、代償期では、全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、腹部膨満、腹部鈍痛などがみられ、顔色は泥土様黄疸を呈し、皮膚にはクモ状血管腫、手掌紅斑また、女性乳房が出現。
  • 非代償期では、黄疸、腹水、浮腫、胸水、食道静脈瘤による出血、肝性昏睡など。
  • 肝硬変の三大合併症として(1)肝不全、(2)食道静脈瘤、(3)肝細胞癌があげられ、これらが主な死因にもなる。
 5.予防
  • B型肝炎の予防で一番重要なのは、キャリアをなくすことである。
  • HBs抗原陽性でも多量にウイルスを持っている場合、母子感染の確立は70〜80%。
  • 現在、母子感染対策として、1985年から公費によるHBs抗体保有免疫グロブリン(HBIG)、HBワクチンの投与が行われている。
  • C型感染では、慢性肝炎を引き起こすC型肝炎ウイルスが発見され、血液中のC型肝炎ウイルスの検査薬も開発され、輸血による感染の心配がなくなった。
  • アルコール性肝炎では、アラニン(アミノ酸の一種)が、過剰アルコール代謝の際の毒性を抑え、アルコール代謝をスムーズにし、二日酔いを防ぐ効果があるものの、
  • 根本的な予防としては、飲みすぎないこと、一週間に4日程度に節酒することが大事。
  • 日本人の場合、ウイルス性肝炎が多く、中でもキャリア組(遺伝)がB型肝炎で200〜300万人、非A型・非B型肝炎が300〜500万人と言われる。キャリア組は、体力が落ちると発症し、繰り返すと肝硬変に。
  • これら膨大な数のキャリアを通じた二次感染があることから21世紀の国民病と言われ、国がマスクリーニングを行っている。
  • 現在、A・B型についてはウイルス発見がされ、B型についてはワクチンが開発されるなど、予防・治療法も殆ど確立されている。しかし、非A・非B、C、D、E、F型のウイルスはまだ確認されていない。
 6.改善
  • 肝臓病を治す特効薬はない。
  • 肝臓の働きをよく知って、肝臓を疲労させないで常に生き生きさせる為に、煮遅行のバランスの良い栄養摂取と三度の食事を規則的にとり、暴飲、暴食を避けた生活とアルコール量に注意すること。
  • 肝機能が低下状態にある時は、必要栄養量を過不足なくとり、過剰栄養による代謝産物の悪影響を防止する。
  • また、栄養不足による肝臓の修復遅延が起こらないようにする必要がある。
  • C型肝炎の場合、成人になって感染してもキャリアになる。
  • 罹患して初感染の場合は安静と高たんぱく質食による治療を行う。
  • キャリアの場合、無症候性であれば、通常の生活をさせ、様子をみる。
  • C型肝炎の患者にインターフェロン(IFN)を投与すると約60%の患者の肝機能が正常に戻ったままであるという臨床試験が検討されていたが、近年、その副作用(失明、自殺者の続出)が発表されている。
 7.食事療法
  1. 蛋白質は、良質のアミノ酸を意識し、過不足なく、とること。
  2. エネルギーも、不足すると蛋白質から補おうとするので、過不足なく、とること。
  3. 油脂は、必要以上にとらない。
  4. 食物繊維を、たっぷりとる。便秘は大敵なので予防のため、野菜や海藻を沢山とる。
急性肝炎
  1. 高たんぱく・標準体重が維持できる高エネルギー・高ビタミン食が原則
  2. 黄疸がある場合は脂肪を20〜30gに制限。唐辛子など刺激物は避ける。
慢性肝炎
  1. 高たんぱく・標準体重が維持できる高エネルギー・高ビタミン食が原則
  2. あまり高たんぱく・高エネルギー食を続けると、かえって肝臓に脂肪がたまる。
 肝硬変(基本的に食塩の制限とアルコールの禁止)
  • <代償期>高たんぱく・標準体重が維持できる高エネルギー・高ビタミン食が原則
  • <非代償期>代償期食に加え、食塩制限が必要
  • <肝不全期>たんぱく質制限が必要
 肝脂肪
  • <過栄養性>栄養素のバランスをとりながら、摂取エネルギーを減少する
  • <低栄養性(アルコール性、飢餓、栄養失調)>栄養素のバランスをとりながら、摂取エネルギーを増加する。

  • 肝性脳症:
    • 30g以下の低蛋白質食、又は無蛋白質食。標準体重が維持できる高エネルギー。 
  • 食道静脈瘤:
    • 食事は全て柔かくし、飲み物もぐいぐい飲まないようにする。
    • 肝臓を温めて食後はすぐに横になった方が良い。(腹ばいは駄目)
  • 耐糖能異常:
    • エネルギーを必要以上にとらず、脂質を控える。
  • 肝性昏睡:
    • たんぱく質のアミノ酸組成は、Ficher’sRatio(F.R.)=BCAA(分岐鎖アミノ酸)/ AAA(芳香族アミノ酸)mol比の高い食品を選ぶと効果的である。



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